長い付き合いの衣料用洗剤
数量限定のパッケージは
まるでお菓子みたい
だから注意書はしっかりと
眠りとは程遠い不気味な覚醒の夜
不慣れなベッドに枕を二つ重ねて横たわり私にしては珍しく長いことテレビを観た
不安を一時でも消して去ってくれれば内容はどうでもよかった
焦りを緩和してくれる何がしかの音が欲しかった
しかし暗闇に浮かびあがった青白い画面に映し出された数々の画像が
一瞬のうちに私を釘づけにし視神経は狙いとは裏腹により敏感になった
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プログラム・3・ETV特集
失われた言葉を探して
ホテルの壁に張り付いたテレビの大画面がズーンと眼を射る
辺見庸氏のわずかに歪んだその唇から発せられる言葉の数々に
焦燥感劣等感猜疑心羞恥心問題意識それらがごちゃ混ぜになってにじり寄ってくる
きちきちの白いシーツを無理やりたくし上げ私はじっとその展開を覗き見る
37年前のその事件の記憶はかろうじて輪郭だけ残すのみ
いや輪郭でもなければ点でもなく私の脳裏からはもはや消滅していたと言っていい
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「言葉は3.11を表現できなかった。
われわれの言語表現のやすっぽさが暴かれた」
あまりにも痛烈且つ真実
だから私はあえて詳細に書くことはやめにしよう
ただ言えるのは異常なまでの覚醒が私にもたらした一連の
青白く特異な時間に遭遇しえたことの幸運に感謝するのみ
眠りとは程遠い不気味な覚醒の夜
不慣れなベッドに枕を二つ重ねて横たわり私にしては珍しく長いことテレビを観た
不安を一時でも消して去ってくれれば内容はどうでもよかった
焦りを緩和してくれる何がしかの音が欲しかった
しかし暗闇に浮かびあがった青白い画面に映し出された数々の画像が
一瞬のうちに私を釘づけにし視神経は狙いとは裏腹により敏感になった
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ETV・プログラム2・芸術劇場
牧神の午後(東京バレエ団公演より)
興行師ディアギレフにより舞台化されニジンスキーの降り付けで幕を開けたこの作品
モダンバレエの初作とも言われドビッシーの音楽はもとより衣装・舞台美術など
すべてが古典バレエの枠を超え不思議な世界を醸し出している
次男が大学の卒業論文でバレエの歴史を調べている時
ニジンスキーの踊る牧神の写真を彼の机の上でで見たことがある
初演から今年で百年というこの作品 何度観ても最後のシーンには衝撃を受ける
初演に際しては観客やメディアの批評も様々でバレエ界に旋風をもたらしたという
今尚揺るぎない芸術作品として受け継がれてきたその歴史を思う時
西洋の芸術の奥深さそして門戸の広さ柔軟さを見せつけられる思いがする
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これほど熱心に観ていたらいくらなんでもそろそろ睡魔が・・・
と思いきや覚醒の壁は揺るぎなく当然のように第三章へといざなう