ハコちゃんは 日本の北に住んでいる
10歳の小学3年生
家族は
おとうさん おかあさん 犬のザラメさん カメの 安西さんと村上さん
*
ハコちゃんは 毎朝 おかあさんに髪をとかしてもらっている
ハコちゃんの髪はちょっとクセ毛なので
朝起きるとグシャグシャになっていて とてもひとりでは無理
時々 前髪をピンで留めることもある
ピンク色でリボンの形のもの 黄色いあめ玉みたいなものもある
そういえばザラメさんも時々トリミングした後 髪飾りをして帰ってくる時があるよ
:
ハコちゃんは 月に一度 近くのヘアサロンで髪を切りに行っている
そこは ハコちゃんのおかあさんのお兄さん寅三おじさんが経営しているお店
ハコちゃん そのおじさんのこと 寅ちゃんって呼んでいる
だって映画の主人公の寅さんみたいにおもしろいんだもの
*
日曜日 ハコちゃんがおじさんの店のドアを開けると
「いらっしゃい! はっちゃん!!」というおじさんの元気な声
おじさんはハコちゃんのことを はっちゃんって呼ぶ
そしたら どこからか
「これはこれは はっちゃん 偶然ですねぇ」
ふざけた声は同級生のあおちゃん(青乃 ハッサム君)
あおちゃんのおとうさんは スリランカ人でレストランを経営している
ハコちゃん 前にあおちゃんの誕生会に呼ばれて行ったことがあるけど
目が飛び出るほどおいしいごちそうがたくさんで驚いたことがある
あおちゃんもおじさんの店の常連なのだ
「こら! 動いたら危ないぞ! 耳をちょんぎっても責任とらないからな!」
おじさんが あおちゃんの頭をコツンとたたいた
しばらくして 水色のケープにくっついたあおちゃんの短い髪の毛を
ブラシでサッサッと払いながら おじさんが言った
「そういえば きのう電話で聞いたおもしろい話 二人に教えてあげよう」
「え 何 何??」
ハコちゃんとあおちゃんが おじさんの顔を覗きこんだ
「奈良県で床屋さんを経営しているおじさんの友達の店に来るおもろい小学生の話」
「おもろいって知ってる!関西弁でおもしろいってことでしょう?」
はこちゃんが 興奮した声で言った
「そうそう この話はね その関西弁でなくっちゃ おもしろさが充分に伝わらないんだな」
そう言うなり おじさんはヒョイっと待合の椅子に膝を折って座ると
落語家になったみたいな調子で話始めた
「髪を切る商売をしておりますと いろんなお客様がいらっしゃいます
髪の濃い人 薄い人
柔らかい髪質の人 剛毛の人
無口な人 おしゃべりの人・・・・」
「 早く教えてよ 小学生の話なんでしょ?」
あおちゃんがせかした
「おっと そうでしたな 失礼いたしました
では ある日の小学生の男の子と店主の会話をひとつ・・・・・」
:
『ヘビ怖い?』
『いや、怖ないで』
『何が 怖いねん』
『アサリが怖いねん』
『え?アサリが?』
『だってさぁ アサリってな なんかトゲあるやんか あれが怖いねん
ほんでな おっきいアサリのほうが もっと怖いねん』
『え?アサリなんか味噌汁やんか なんで怖いの?』
『うん あのなぁ せやけど怖いねん・・・・あ 違うわ サソリや!!』
おあとがよろしいようで・・・・
:
しばらく 間を置いてから
ハコちゃんとあおちゃん 顔を見合わせてクスクス笑った
話もおもしろかったけれど
何よりも関西弁をしゃべるおじさんのほうがもっとおもしろかった
「ね?おもろい話だっただろう?この店にも時々おもしろいお客さんが来るけど
きのう電話でその話聞いたときはさすがに吹き出したよ
さてと あおちゃん終了したから 今度は はっちゃんの番だよ」
「 おおきに また来るでぇ! ヒラリー!!コキントン!!」
あおちゃんがヘンテコな挨拶をして帰って行った
ハコちゃん椅子に座って 鏡の中の自分と対面してふと思い出した
数日前 おかあさんに牛乳を買うのを頼まれてコンビニに走って行った時
息をきらしてカウンターにいる店員さんに
「皮下脂肪牛乳ください!」って言ったこと
その店員さん しばらく考えてから
急に笑いをこらえてハコちゃんに言った
「ああ わかった! 低脂肪牛乳のことね!」
後でおかあさんにすごく笑われたけど それからしばらくコンビにには行けなかった
恥ずかしくて
アサリとサソリを間違えたっていう その男の子はどうだったんだろう
ちょっと 考えてみた
でも その子は 関西の男の子だからきっと家に帰ってから
「かあちゃん アサリとサソリ 間違ったらあかんでぇ」
とかなんとか 笑って言ったんだろうか
そして自分の失敗は絶対 おじさんには知られたくないって思った
また落語みたいに どっかの小学生に話しをされたら嫌だもの
「はっちゃん 何 ボ~ッとしているんだい?椅子倒すよ」
おじさんがカットの終ったハコちゃんの頭にグシュグシュってかけたシャンプーが
あまりにもひんやりしていたから ハコちゃんおもわず叫んだ
「寅ちゃん 冷たいでぇ!!」
おじさんが 一瞬 手を止めて 大きな声で笑った
< おわり >
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ハコちゃんシリーズは カテゴリのブログ童話で不定期に連載されています
今回のお話PARTⅢは ブログ仲間トラップ大差←(私はいつも寅ちゃんと読んでいます)の店で
実際にあった対話を参考にしたものです
更に あおちゃんの記事←も一部拝借しました
寅ちゃん あおちゃん ネタ拝借したでぇ ありがとう
イラストは引き続きハコちゃんのモデルでもある ブログ仲間ショコラ果歩さんによるものです
前回同様内容を知ることなく 私の絵のリクエストを快く引き受けてくれました
感謝します ありがとう
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wrriten by sakauta
illustrated by ショコラ果歩
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